モンテッソーリが考える子どもの発達プロセス

 

モンテッソーリは、子どもの発達プロセスはこのように進むと考えていました。

活動の自己選択 → 作業 → 集中現象 → 内面の充実 → 子どもの本来の育ちの姿(ノーマライゼーション)

 

モンテッソーリ教育が目指しているのは、知識や能力の充実に留まらず、ノーマライゼーションを経て人格形成を行うことです。モンテッソーリ教育を経て育っていく子どもの姿はこのように表現されます。

自立していて有能で

思いやりと責任感があり

一生涯を通して学び続ける姿勢を持った人間

引用:モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び(松浦公紀著)

 

上記発達プロセスの中で、モンテッソーリがもっとも重要だと言っているのが【集中現象】です。身体や手指を使いながら、1つのことに繰り返し何度も集中する姿を指します。集中している子どもは口がとんがってくる、と表現される方もいらっしゃいますね。

 

そしてこの【集中現象】に至るまでには、大人がすべき役割があります。それが今回のテーマ【観察・環境設定・提示】です。

モンテッソーリ教育における、大人の役割

❌ 教え込み

⭕️ 観察→環境整備→提示

 

モンテッソーリ教育の【観察】とは?

 

子どもが自己教育力を発揮し、自立という方向性に向かって発達を遂げるには、大人の教え込みは弊害になり得ます。

 

モンテッソーリ教育では、大人の役割は【観察】からスタートします。そしてその対象は【子どもの敏感期】です。例えば、運動の敏感期である場合、どんな動きを獲得したがっていそうか?引く?運ぶ?落とす?貼る?それを観察を通して子どもの敏感期について仮説を立てます。

 

モンテッソーリ教育は、子どもの敏感期を【観察】を通して知ることから始まる。

 

このように言葉にすると簡単に聞こえますが、やって見ると難しいのが【観察】です。

家庭でモンテッソーリ教育を実践しようとされている親御さんは、モンテッソーリ園の先生のようにたくさんのお子さんを観察した経験がある訳ではないので当たり前ですよね。指針が必要です。そのため、家庭で実践をされる際は、予め「モンテッソーリ教育ではどんな活動が用意されているのか?」を網羅的に学んでおくことで「もしかして、この活動がぴったりな、この敏感期かもしれない」と見立てが立てやすくなります。また、実際に活動を提示し子どもを誘いかけることで「これは簡単そうだったので、次のこの段階に進んでいるのかもしれない」というように、検証されることもあるかと思います。

本来は、観察が出発点であることは頭に入れておいていただき、活動を子どもに無理強いすることはないようにしつつも、仮説検証を繰り返すように様々な活動を誘ってみて、その様子を【観察】することも大事な姿勢だと思われます。

 

観察のその先に【環境の整備】

 

観察を通して【子どもの敏感期】に対して見当がついたら、次のステップとしてその敏感期にあった【環境の整備】を行うことが大人の役割になります。敏感期に沿った環境に出会った子どもは、自己教育力を存分に発揮し、集中現象を通してノーマライゼーション(本来の子どもの育ちの姿)を見せます。

環境を構成する要素としては、人的環境と物的環境とがあります。人的環境については次のパートで触れます。物的環境とは【モンテッソーリ教育で使用する用具や教具】を指します。

 

敏感期に沿った環境とは、例えば、

・1人で衣服の着脱をしたがるが、うまくできない → 着衣枠

・飲み物を自分で入れて飲みたいが、こぼしてしまう → 色水の開け移し、雑巾絞り

・砂いじりや壁の感触を楽しむ → 触覚板

などが挙げられます。

 

運動の敏感期であれば、【日常生活の練習】の活動を

感覚の敏感期であれば、【感覚教育】の活動を

というように、全てのお仕事の背景には必ず敏感期が存在しています。

今後、こちらのブログでも、様々な敏感期に即したおうちでできるお仕事についても記事を挙げていきたいと思います。

 

ご自宅で、モンテッソーリ教育の環境を整備する際の留意点についてお伝えしましょう。

① 子どもが自分で活動を選びやすいように配慮する

自己選択がしやすいように、活動ごとにお盆に乗せたり、1つの置き場所に1つの教具を置くというようにするといいです。

さらに自宅の場合は、おもちゃと教具は置き場所を分けたほうが望ましいです。また、これは私の経験とホームモンテッソーリを実践されている方々の認識ですが、部屋に出しておくのものと目につかないところにしまっておくものを適宜子どもの興味や活動に合わせて調整する方が、お仕事への動機付けになりやすいようです。大人の場合もそうですが、選択肢が多すぎると混乱し、選べなかったり、馴染みのあるものばかりで活動してしまいます。教具やおもちゃの分量についても、お子様の様子を見ながら流動的に調整すると良いでしょう。

 

② 作業しやすい場所の設定

モンテッソーリ自身も子どもの家を作るときにまず着手したのが、子どもサイズの家具でした。子どもが活動しやすいサイズの机・椅子を用意しましょう。

また、床の上で活動することも多いです。広めのフェルトマットや絨毯なども必要になります。この絨毯の上で活動をする、ということを理解すると集中がそこに向けられますし、片付けもスムーズに進みます。

 

③ 教具や用具は目に付く場所に設置する

我が家の場合は、リビングに教具棚を設置し、そこで日中過ごすようにしています。自然と活動することもありますし、私自身も生活の中で自然と誘いかけを行うことができます。

また、新しい教具を準備した際も、手の届くところに設置しておいて「これ何?!」と興味を持たせてから提示に入るようにしています。

 

 

 

やってみせる教え方【提示】

環境を構成することができたら、最後にやるべきことは【提示・提供】です。

モンテッソーリ教育では、子どもは環境(用具や教具)と関わることで自ら学んでいきます。その「関わり方」を伝えるのが【提示・提供】の役割です。「ことばで説明する」「間違いを正す」のではなく「やってみせる」「自らで誤りに気づく」という手法を取ることで、子どもの「自分でやってみたい!」「1人でできた!」という意欲や達成感を引き出すためのガイドとなります。

また、模倣期にある子どもたちのモデルともなります。

 

提示の範囲について紹介します。

作業の準備 → 模範提示 → 子どもの活動の有無 → 片付け

引用:モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び(松浦公紀著)

作業の準備には

  1.  子どもをお仕事に誘いかける 「一緒にやってみない?」
  2.  作業名・教具名を伝える   「これは円柱さしです。」
  3.  場所を指定し、指定する   「机の上でやろうね。」
  4.  用具や教具を運ぶ(持ち方、運び方を示す)「こうやって運びます。」
  5.  子どもの利き手の側で模範提示に入る

が含まれます。

 

模範提示のポイントは以下の通りです。

  1. 分析行動をする
  2. 興味の中心はどこに現われるか意識しながら行う
  3. 誤りの訂正が何であるかを知って行う
  4. 適切なことばかけ
  5. 提示後に子どもに誘いかける

【分析行動】は、動作一つ一つを分解してゆっくりと見せることを指します。例えば、鉛筆を持つ時の動作は、右手で持ち上げ、左手で先を持ち、右手中指、人差し指、親指の順番に鉛筆に添えて持ちます。これらを一連の動きとして見せるのではなく、一つ一つゆっくりと止めながら見せることで、子どもが模倣しやすいように導きます。

【興味の中心】は、その活動の中で子どもがグッと惹き込まれるポイントを指します。面白そうな音や、難しそうな動作がそれにあたります。日常生活の練習の分野には、それぞれの活動の中に興味の中心があります。大人も練習を重ねて、魅力的な提示を行うと、子どもの興味を引き出しやすくなります。

【誤りの訂正】は、どうなったら失敗で、失敗した時にどうするべきか?を示すことを指します。色水の空け移しでは、活動の最後に「机をみて、濡れていたらこれで拭いてください」と伝えます。これが、濡らしてはいけないというルールを伝え、失敗しても「自分で」リカバーできることも同時に伝えています。

【適切なことばかけ】は、できるだけことばを使わないで行動で示すことを指しています。動作を見ることと、ことばを聞くことに同時に集中させるのは子どもの場合は困難です。

【提示後に誘いかける】は、子どもにやるかを選択させることを指しています。「やってみますか?」ということばは、模範提示が終わったサインで、そこから先は子どもが活動を決めます。やらないと言った場合でも、片付けを一緒に示しながら行います。

 

まとめ

 

さて今回は、モンテッソーリ教育における、大人の役割について見てきました。従来の「先生」という存在とは少し違って見えますね。大人は子どもを全面的に受容し、子どもの成長の方向性を示す存在です。決して、一方的に管理し支配し教え込むのではないのです。子どもは自らで学び気づくことができます。「今、この子は何を探しているんだろう、何に夢中になっているんだろう、どんな発達を遂げようとしているんだろうか」そのように子どもを見つめる温かい態度こそが、大人が提供すべき【人的環境】と言えます。

 

一方で、「モンテッソーリ教育って、子どもの自由にさせるんだよね」と、「放任」を連想される方もいらっしゃいます。次回は、モンテッソーリ教育の自由と規律について記事をあげようと思います!