モンテッソーリ教育は、医師が体系づけた世界的な教育方法

 

モンテッソーリ教育は、マリア・モンテッソーリというイタリア人女性医師によって100年以上前に体系づけられた教育法です。日本では取り入れている教育機関が限られているため馴染みは薄い方が多いと思いますが、世界を見るとGoogle創始者のラリー・ペイジ、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、Amazon創業者のジェフ・ベゾス、オバマ元大統領、などたくさんのリーダーたちがモンテッソーリ育ちだと言われており、特に欧米ではおよそ3割の子どもたちがモンテッソーリ教育を受けていると言われているほどメジャーな教育法です。幼児教育から大学までモンテッソーリ教育を取り入れている学校が存在します。

 

日本では、棋士の藤井聡太さんがモンテッソーリ教育を受けていたということで、ちょっとしたブームになりました。日本では現在、モンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園、保育園、お教室、そのほか[子どもの家]と呼ばれるモンテッソーリ教育を実施する保育施設でモンテッソーリ教育を受けられることができますが、身近に施設がある人は限られるため、自宅でモンテッソーリ教育を取り入れる人も増えています。残念ながら日本では、幼児教育として提供されている場合がほとんどです。

 

モンテッソーリ教育は[オルタナティブ教育(=従来の教育手法とは異なる新しい教育選択肢)]の一翼を担っていて、近年非常に注目されています。従来の教育というのは所謂[一斉教育]です。オルタナティブ教育と呼ばれるモンテッソーリ教育やシュタイナー教育、イエナプラン、レッジョエミリア・アプローチなどは、子ども個人や子どもの小集団自身が学習対象を自己決定し教師がそのサポートを担う[個別教育]であることが共通していると言えます。AI時代の到来や、IQよりもEQの高さが将来の社会的な成功に繋がるという論文が発表されたこともあり、今の時代を生きる子どもたちへの教育は何がベストなのか?を考えさせられる機会が増えました。その文脈の中で[一人一人の子どもの意欲を引き出す]手法として、モンテッソーリ教育を含むオルタナティブ教育の可能性を感じている親御さんもいるのでしょう。

 

モンテッソーリの発見【自己教育力】

 

マリア・モンテッソーリは、精神障害を患っている子どもたちを医師として観察しているうちに、あることに気づきます。当時、精神障害を持った子どもたちは、遊ぶものも何もない狭い部屋に閉じ込められていました。食後には、床に落ちたパンくずを拾っていたそうです。モンテッソーリはその姿を見て「子供達が、食物以上に、自分の手を働かすものを渇望していることを見てとった。そしてそれは、子供が自分の知性を発達させるためにする、無意識な欲望に違いないと考えた。」(市丸成人著・改訂モンテッソーリ教育学入門)のです。

これを契機に、精神障害を患っている子どもたちへの、モンテッソーリ独自の教育的治療が開始されます。そして、2年後には、健常児よりも素晴らしい読み書き計算の能力が認められるようになりました。その後、このモンテッソーリの教育手法を健常児にも適用するとさらに能力を引き出せるはずだとして、スラム街の子ども達の保育施設を立ち上げます。

子どもたちを科学的に観察することが繰り返され、マリア・モンテッソーリは【子どもは自分で自分を教育する力を持っている=自己教育力がある】ということを確信します。

この【自己教育力】は、モンテッソーリ教育の根底を流れる非常に重要な児童観です。

子どもは教えてもいないのに、母語を習得し、3才ごろにはおよそ300語もの言葉を使いこなします。自分で着替えられるようになり、ご飯も1人で食べられるようになっていくのです。

モンテッソーリ教育では、この子どもの自己教育力をベースとして、モンテッソーリ教育独特の用具や教具を大人が整備することで、心身と知性の発達を促します。子どもの「成長したい!」という学ぶ意欲を活かすため、無理やり覚えさせたり、知識を無理に詰め込んだりすることはありません。手や体を動かしながら、遊ぶように学んでいきます。幼児でも四則計算ができたり、自然に文字をかけるようになることもありますが、それは[早期教育]ではなく、子ども1人1人の適齢期に合わせた[個別適時教育]であると言えます。

 

次回は、この【自己教育力】を活かすためのモンテッソーリ教育のキーワード【敏感期】について纏めます。