モンテッソーリ 教育といえば【敏感期】

前回の記事で、モンテッソーリの発見として【自己教育力】を挙げました。子どもは大人の教え込みではなく、自らの力で成長していくことができるということです。

この自己教育力が、大人の目にも見て取れるよう子どもの表面に現れるのが【敏感期】です。例えば子どもは、文字に強い興味を示したり(文字に対する敏感期)、物を置く場所が変わると怒ったり(秩序の敏感期)、延々と歩くのが楽しかったり(運動の敏感期)します。このように、ある時期に、ある特定の能力を身につけるために、特定の対象に強い感受性をもつ時期を敏感期と言います。そして、敏感期にはいとも簡単にその特定の能力を獲得することができると言われています。心理学用語の【臨界期】に近い考え方です。

幼児期のモンテッソーリ教育では、この敏感期を大人が捉え、それに合わせた用具や教具を準備することで、子どもが自主的に学び、発達を遂げていくと考えています。

様々な敏感期

ここでは「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び(松浦公紀著)」を引用しながら様々な敏感期を紹介していきます。

①言語の敏感期

[話しことばの敏感期]7ヶ月の胎児期〜3歳前後

[文字に対する敏感期]3歳半〜5歳半

話しことばの敏感期では、子どもは周囲の大人の話をよく聞いて口元を見て、それを真似しようとしています。モンテッソーリ教育に限らず、赤ちゃんにはゆっくりたくさんの言葉を実況中継のように聞かせるといい、と言いますが、まさにこの話しことばの敏感期にあり、ことばをインプットしているからです。2歳前後には発語も爆発することが多いです。

また、ことばというツールを知ることで「話すって楽しいな」「コミュニケーションを取れるっていいな」という感覚を赤ちゃんのうちから経験しておくことは、健全な親子関係を築いていくためにも重要です。まだ話すことができない赤ちゃんとも、「そうね、気持ちいいね」「どうしたの、お腹空いたのかな」と泣き声やクーイングに反応してあげるのです。これを[応答的環境]と言います。

文字に対する敏感期には[書くことへの敏感期]と[読むことへの敏感期]があります。自分の持ち物にいつも書いてある文字(名前ですね)に気づいたり、エレベーターの数字に興味を持ち出したりします。ひらがなやカタカナで書かれていて、子どもが大好きな物の図鑑(動物、食べ物、昆虫、恐竜、キャラクターなど)を用意すると、自然と読める文字も増えることがあります。日本語は一文字一音節のため、読みやすく獲得しやすいとも言われています。

親が気にするところで「就学前にひらがなを書けるようにしないと」ということがあるかと思います。苦労されることも多いかと思いますが、これも敏感期があり、読みよりも書きを先行させる(またはほぼ同時)のは、モンテッソーリ教育の特徴とも言えます。(具体的な活動については、また別の記事にしますね)

 

②秩序の敏感期 6ヶ月〜6歳前後 その後ゆっくり消えていく

特に1歳半〜2歳半ごろに強く出ると言われています。いつも同じ場所に同じものがあること、同じ順番で同じ道で同じ場所に行くことなどにこだわりを見せます。「いつも同じ」ことがこの時期の子ども達の安心感に繋がります。

また、「同じ」が分かるということは「区別」ができるようになってきているということです。この「区別できる」ということをモンテッソーリは「知性の特徴」と述べています。(自己教育 マリア・モンテソーリ著 中村勇訳)

知性の働きが具体的に表面化するのはおよそ3歳以降になりますが、秩序の敏感期を通して、子どもは知性の萌芽の準備を始めていると言えるでしょう。また、秩序の敏感期は「数への敏感期」とも繋がります。

秩序の敏感期はイヤイヤ期の一つの要因とも言えるので、現役ママ・パパからするとなかなか厄介かも知れませんね。親からするとどうでもいいようなコダワリも、子どもは知性の萌芽を準備しているので、危険でなく、周囲に迷惑もかけない限りは、子どもの興味に少し付き合ってあげるといいです。本人が満足すると、親が言って聞かせるよりも遥かに楽に次の行動へと興味が移っていきます。

私自身も、服を着替えさせる順番をいつもと違ってしてしまうと息子の逆鱗に触れ、イチからやり直ししたことが何回かあります…

 

③小さい物への敏感期 2歳〜3歳

小さなアリをじっと見つめる子どもの姿、小さい絵がぎっしり描かれた絵本を何度も眺める子どもの姿を目にしたことはないでしょうか。飽きることなく没頭している姿に感心するほどです。

この時期は、周囲の環境に五感を通して関わり、世界を吸収していく時期です。次に紹介する感覚の敏感期とも密接に関わっています。

④感覚の敏感期

[感覚の探求、溜め込み]0歳〜3歳

[感覚印象の整理、分類、秩序化]3歳〜6歳

[感覚の探求、溜め込み]は、五感を通して周囲の環境を知りたがる時期です。見て、触って、嗅いで、舐めて、聞いて、感覚印象を溜め込んでいきます。テレビや本などのメディアを通した経験よりも、生きた実体験を愉しむことが、子どもの知的好奇心を刺激し、更には後々の豊かな概念形成に繋がります。

[感覚印象の整理、分類、秩序化]は、それまでに溜め込んだ感覚印象を整理し、概念として形成していきます。この過程において、実体験と抽象概念を結びつけることを繰り返し経験していきます。

感覚教具はまさにこの[感覚印象の整理、分類、秩序化]のタイミングで使用されます。実体験で得た感覚印象を、教具を使用して整理し、感覚器官の洗練/感覚印象の整理・概念形成/ものの考え方の獲得 が成されていきます。ここは感覚教育として非常に重要なところなので、また別の記事にしますね。

⑤運動の敏感期

[運動機能の発達]0歳〜3歳

[洗練、調整された運動]3歳〜6歳

[運動機能の発達]は、歩く、注ぐ、切る、などの[動きそのものの獲得]を指します。歩き始めた子どもは、目的地もなくただひたすら歩くことを愉しみます。また、なんでも真似をしたい模倣期とも重なり「自分でやりたい!」「やってみたい!」と様々な動きを獲得しようと挑戦したがります。

一方で、[洗練、調整された運動]は、線に沿って歩く、注いで線で止める、線に沿って切るというように[獲得した動きの洗練・調整]を指します。

モンテッソーリ教育では、この運動の敏感期に合わせて[日常生活の練習]という分野の活動が準備されています。活動を通して、自分の思い通りに動く身体や手指を獲得することが目的となります。そして、自分の思い通りにできるようになった子どもは、その活動を日常生活にも還元させ、情緒的にも安定し、達成感や自己肯定感を感じ、新たなことにも[自ら]挑戦し、[自立心・独立心]が育つことになります。

 

ここで獲得した身体や精神的な成長が、感覚教育や知的教育分野(算数・言語・文化)を成立させる土台となります。詳しくは、また別記事にします。

 

⑥数の敏感期 4歳〜5歳

量や手順に興味を持ちます。我が家の息子は「パパとママとねえねと僕で4人だね!」「今日はおばあちゃんがいるから5人だね!」「幼稚園の12月生まれは4人だよね」と人数が気になる時期がありました。

モンテッソーリ教育ではこの時期に算数教育が用意されています。モンテッソーリ教育の算数教育は具体物から入るところが特徴的で、「私が受けたかった!」と仰るママが多いですよ。詳しくは別記事にします。

 

⑦文化の敏感期 6歳〜9歳

子どもは、動物・恐竜・昆虫・宇宙・歴史など様々な事柄に興味を示します。この時期に、モンテッソーリ教育では文化教育が用意されています。特に現代では、テレビや動画、図鑑等を通して、広く様々な物を知る機会に恵まれています。その為、もっと早い段階でこの敏感期が現れることもあると言われています。

 

⑧礼儀と作法の敏感期 3歳〜6歳

挨拶や年中行事が大好きになる時期です。

 

まとめ

今回は、モンテッソーリ教育を知るキーワードの2つ目として【敏感期】を取り上げました。子どもの自己教育力が子どもの表面に現象として現れたものが、敏感期です。大人にとっては「何でこんなことしてるんだろう?」という行動も、子どもの発達に繋がると知ると興味深く温かい目で見ることができそうですよね。

この敏感期を感じ取り、お仕事を用意するのが、モンテッソーリ教育における大人の役割となります。次回はこの大人の役割【観察・環境設定・提示】について纏めたいと思います。